こんにちは。今回の記事を担当させていただくSiroです。14歳の時に本でジョージア語に出会った私が、ジョージア語の魅力を紹介していきます!
一番下にジョージア語を勉強する方法を初学者向けに書いたので、読んでて「あっちょっと見てみたいかも」と思ったら最後までスクロールして見てみてください!
注意
あまりジョージア語の教科書を買って勉強する時間的余裕のない人に少しでも知ってもらえるように情報をいっぱい書きましたが、ちゃんと勉強したい人は逆に押し売りされて萎えちゃう可能性があります。十分にモチベを得られたら、いいところでセーブして自分の目でジョージア語を見に行く、という切り替えをした方が良いかもしれません。
読む時のノイズになることを恐れ、発音の厳密な表記は諦めました。放出音も、そうでない音のように転写しています。文法等についても細かい説明は避けています。
また、日本語での国名「グルジア」が「ジョージア」に変更されたことに伴い「ジョージア語」表記で統一しています。ただ、言語名の場合は「グルジア語」という表記が依然として多いようです。
(そのうち中級編も書きます)
目次
- ジョージア語とは?
- ジョージア語をおすすめする理由1:文字
- ジョージア語をおすすめする理由2:単語
- ジョージア語をお勧めする理由3:文法
- ジョージア語をお勧めする理由4:子音連結と情報量の多い動詞
- ジョージア語をやろう!本&勉強法紹介
- 画像の出典
ジョージア語とは?
この言語は主にジョージア(旧名・グルジア)とその周辺地域で話されています。
ジョージアはヨーロッパの東の方に位置する位置する国で、北海道よりやや小さいくらいの面積です。ジョージアワインやシュクメルリ(松屋で一時期メニューになっていました)、最近はジョージア大使のティムラズ・レジャバ大使(Twitter link)の広報活動などにより知名度が急激に上がっています。
山岳地帯から黒海を望む地域までの多様な景観や豊かな食文化など魅力は尽きない地域なんですが、ここでは泣く泣く割愛して、言語の紹介に移ります。ジョージアの色々な文化や自然環境の綺麗な画像がたくさんみれるサイト(リンク)を置いておきます。見始めると余裕で二時間溶けます。
使われている地域が面白いジョージア語!ジョージア語をやろう!!
ジョージア語をおすすめする理由1:文字
ジョージア語ではジョージア文字を使います。こんな見た目をしています。
文 字 が か わ い い ! ! !私は特にტとჯが好きです。ღは(ღ♡‿♡ღ)など顔文字で見たことがある人もいるかもしれません。ここに列挙したのは現在使われるジョージア文字は合計33文字です。これを覚えれば今のジョージア語の文を全て音読できます。不規則な読みはまず出てこないです。
せっかくなら体感して欲しいので、クイズです!答えは次の章のラストにこっそり書いておきます。
文字がかわいくて簡単なジョージア語!ジョージア語をやろう!
ジョージア語をおすすめする理由2:単語
ジョージア語では語根(root)という概念があり、短い文字列に色々なパーツがくっついて多様な単語が形成されます。もちろんそれらは多くの場合意味的に関連しています。複合語(複数単語が合体した単語)も多いです。下にはწერს(書く)という動詞に関連した単語を書いてみました。(一部はその語源学的関係が不明なものもありますが、お許しください…)
ちなみにწრე(円、丸)、წირი(線)という単語もწერと関係していると言われたりしています。これらの共通祖先というべきもので「ひっかく、表現する」という単語があったと考えられたりしていて、そうすると「ツルハシ」も「書く」と同じწერを持っていることに納得できるかもしれません。
新しい単語に出会ったときにそれを分解して意味を推測するのが結構楽しかったりします。
もう一つ単語について言うと、ジョージア語ではたくさんの言語から単語が入ってきています。
ジョージア語自体は、周辺の話者の多い言語(ロシア語、トルコ語、アラビア語など)とは異なる性質を持っており、ジョージア語固有の言葉(日本語でいう大和言葉)が多いです。固有語以外、すなわち外来語では、ロシア語・アラビア語・古典ギリシャ語・アルメニア語・ペルシャ語(イランの方)・オスマン語(オスマントルコのオスマンです)・英語からの外来語が多く見られます。このように、外来語の輸入元が多岐にわたるというところは一つ面白いところだと思います。
特にロシア語からのものは非常に多く、英語と似た単語も多いので文を読むときにはかなり助けられます。結構日常で使う単語も多いです。(歴史的経緯など考えると、果たして無邪気に喜んでいいのか、という気持ちになりますが…。)勉強に飽きた時に適当に単語を調べてみると意外な語源があったりして楽しいです。
というわけで、ジョージア後には豊かな単語の派生の世界があり、さらに色々なところから来た単語たちが(単調になりがちな)語彙の勉強に彩りを加えてくれるよ、という話でした。
単語が面白いジョージア語!ジョージア語をやろう!
前章の答え:spageti(スパゲッティのこと)
სまで推測できましたか?この「し」みたいな文字はsの音でした(覚えやすい!)。他の文字の発音はこちら(Wikipedia)。イタリア料理になってしまったので、ジョージア料理を紹介しているサイトでも貼っておきます。
ジョージア語をお勧めする理由3:文法
ジョージア語は非っ常に文法が面白い(能格言語である点など)のですが、少し難しいのと、初学者にとってはあまりモチベにならないと思ったので、ここではあえて楽なところ・身近に感じられるところを挙げてみたいと思います。
[1] 名詞に性がない
ヨーロッパの多くの言語では名詞に男性名詞・女性名詞(・中性名詞)の分類があり、基本的にはいちいち覚えるしかなく、書くときも気をつけないといけない厄介なものなんですが、ジョージア語にはこれはありません。なので、普通に単語を覚えたらそれで十分です。1. で書いた通り文字に発音が完全に対応しているので、発音を覚えれば書けるし、逆も然りです。嬉しい!!
[2] 冠詞がない
嬉しい。冠詞の使い分けで減点されることはありません。ないから。
[3] 複数形・格変化はパーツをくっつけるだけ
ジョージア語の名詞の変化は、語根と呼ばれる基本的に変わらない部分から考えます。
・複数形は語幹に-ebをつけるだけです。
・主格は、子音で終わっていれば-iをつけ、そうでなければそのままです。
・主格以外の6格も基本的に最後の母音だけ注意すれば正確に語尾を付けられます。
(ただし格によっては一部の名詞においては縮約という母音が落ちる現象が発生します)
日本語で誰かのものであることを言う時に単に「〜の」「〜を」「〜で」と付けるような感じで行けるので楽です。
[4] 前置詞ではなく後置詞
さらに、後置詞というものがあるんですが、これも割とわかりやすいと思います。前置詞と機能は同じだけど、名詞の後に置くから後置詞です。
例えば「〜の中で」は、後置詞の-ში(sh i)をつけることで表現します。「建物(შენობა, shenoba)の中で」ならშენობაში(シェノバシ)となります。
日本語でも「〜の中で」という時に先に「何の中なのか」を言うので、順番が同じですね。
意外と日本語と似てるところもあるジョージア語!ジョージア語をやろう!
ジョージア語をお勧めする理由4:子音連結と情報量の多い動詞
ここでは、ジョージア語の珍しい特徴(性質)として「子音連結」と「情報量の多い動詞」を紹介します。
[1] 子音連結
子音連結は子音が母音を挟まず続くことで、英語だと例えばstrong(強い)には/str/という三連続の部分(三重子音)があります。子音連結は、多くの言語では回避され、日本語でもせいぜい二重子音くらいですが、ジョージア語はこれが非常に多いことで有名です。しかも、連結が長いです。
有名な例として、(スポーツなどの)コーチを意味するმწვრთნელი (m ts v r t n eli)があり、6重子音が含まれています!無理して言うならムツヴルトネリです。私の知っている最長の子音連結は、これも有名なんですが、გვბრდღვნი (g v b r d gh v n i)で八重子音です。これは流石にレアですが、三、四重くらいなら割とよく使う言葉にも頻繁に出てきますし、しかも単語の最初にこのラッシュが来てしまうことも多いです。よくこんなので意思疎通できるなって思いますよね。
[2] 情報量の多い動詞
最後の例のგვბრდღვნი (g v b r d gh v n i)は「あなたは私たちを引き裂く」という意味で、いつ使うんだよという感じではあるけど、なんと一単語の中に、「何をするのか(引き裂く)」「誰が引き裂くか(あなた)」「誰が引き裂かれるのか(私たち)」「引き裂くのはいつか(現在)」の情報が含まれているんです!これもなかなか面白い事実じゃないでしょうか。活用表もこんなふうに主語・目的語の2軸になります。
語根であるყვარが一切変化していないことや、Bが一人称ならვარがつくこと、Bが複数なら最後にთがつきがちなこと、Aが三人称ならუ-がつくことなど、いろいろな規則性を見出すことができます。これらの規則は語根によらず共通であることが多いです。
めずらしい性質を持つジョージア語!ジョージア語をやろう!
以上で魅力紹介は終わりです。まだまだ知りたい!と言う方はWikipediaを読んだり、あるいは書店や図書館に行ってジョージア語の解説書を見たりしてみましょう!
ジョージア語をやろう!本&勉強法紹介
ジョージア語の勉強法を紹介します!
[本]
白水社の「ニューエクスプレスプラス グルジア語」が一番良いです。(Amazonのリンク)
私もこれで最初勉強を始めました。ニューエクスプレスシリーズは細かく課で分かれていて、短い対話文を題材に文法項目の解説をしていくスタイルで、多くの人にとってはやりやすいと思います。
内容は基本の基本からで、言語学の知識も必要ないしあんまり語学やったことない人でも読めるはずです。CD付きで、「語彙力アップ」「表現力アップ」といった素晴らしいコーナーもあります。確認問題までついています。ジョージア語でこんな良い日本語で書かれた参考書があること自体信じられませんが、後でも書くように、かなり安いと思います。体系的に勉強していきたい人もいると思いますが、その場合もこのニューエクスプレスの文法のページを見ながら自分でまとめていくのが(日本語でやるなら)いいと思います。
日本語の他の本であれば、国際語学社の「グルジア語文法」などがあります。(Amazonのリンク)古めの本なので手に入りにくいかもしれません。私の大学の図書館の隅の隅にありました。Amazonでの評価は低いけど、結構面白いです。が、最初やるなら、やっぱり上にあげたニューエクスプレスのがいいかなぁと思います。他の本については読んだことがないので言及を控えます。
英語もいけるぞ!という方にはHoward I.AronsonのGeorgian: A Reading Grammarがあります。(Amazonのリンク)これはガチの文法書という感じで、文法項目ごとに説明されています。詳しいのはとてもいいんですが、結構値が張る(8,000円以上?)のが難点です。(値段以上の内容があると思うんですが、あんまり初学で手を出すには難しい金額かな、ということです。)大学の図書館にあるかも。うちの図書館にはありました。
[勉強法]
勉強法を語れるほどジョージア語も語学もできないんですが、役に立つこともあるかもなので書いてみます。
まず、独学で語学をやるのはとても難しいので、あんまり上手くいかなくても気にしないことです。あと独学だと独自の勉強法を開発したくなることがありますが、結局愚直にノートに写したりまとめたりしながら読んでいくのが良かったりもします。ちなみに今年は夏に東京外国語大学でジョージア語を学ぶ研修があったようで、意外と人から学ぶ機会もあるので調べてみるといいかもしれません。
ジョージア語特有のところで言えば、動詞の活用も名詞の活用も割と規則的に見えてサッと流してしまいそうになるのが罠ですね。曖昧なまま進んでしまうとそのうち意外と嫌な気持ちになると思います。動詞・名詞をいくつかリストにしておいて、それらの活用表を全部書き出せるようにしておくといいと思います。
語彙力をつけるには、Ankiというアプリがいいです。単語カードを作ることができて、しかも各単語の忘れやすさを勝手に評価してくれて最適なタイミングで復習できるようになっています。Excelで単語リスト作ってインポートするとかできます。(私は大学入るまで知りませんでした。)PC版もあります。無料。
また、個人的にはFun Easy Learnという語彙力アプリが好きです。これはすでに「果物」「スポーツ」「ビジネス」など項目ごとに単語がまとめられていて、絵とセットで覚えられます。無料でも相当単語数があると思います。ただ、これ問題なのが、かなり対応している言語は多いんですがジョージア語が無いんですよね。なので、勉強する言語を日本語or英語に、母語をジョージア語に選ぶという手を取ることになります。こういうのをReversed Learningとか言った気がします(その利点を説明しているページを見つけました)。比較的マイナー言語な言語では特に有効なようです。まあ今回は語彙なので単語と訳語を入れ替えただけで実質何も変わっていませんが、あんまり知る機会がない考え方なので紹介しておきました。とにかくFun Easy Learnは非常に優秀なアプリなのでぜひお試しを。
あと言い忘れていましたが、Wiktionaryをたくさん使いましょう。(Wikipediaと同じ財団のプロジェクトで、無料で使えるオンライン辞書・類語辞典です。)最初は英語の文法用語がわからなくて難しいかもしれませんが、語学において本当に心強い存在です。語源も非常に詳しく載っています。
さて、最後かなりダラダラになってしまいましたが、こんなところで終わりにします。
読んでくれてありがとう!ジョージア語をやろう!
画像の出典
ヒンカリ(ジョージアの水餃子):
https://www.flickr.com/photos/30478819@N08/50126468737
ハチャプリ(チーズパン):
https://www.pexels.com/photo/khachapuri-on-plate-15913594/
シュクメルリ:
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Georgian_cuisine_(33309210248).jpg
ジョージアワイン:
https://torange.biz/bottles-georgian-wine-42382
ジョージアの山(Truso Valley):
https://pixabay.com/photos/caucasus-georgia-truso-valley-3911403/
海を臨む街(Batumi):
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Seaside_of_Batumi.jpg
街(ジョージア首都Tbilisiの中心部)の夜景:
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tbilisi_city_at_night,_Georgia.jpg
手前に教会がある山と街(ジョージアの古都Mtskheta)の風景:
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